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スマートな住まい・住まい方カフェ
第1回 スマートな住まいって何?

エコでスマートな住まいを住まい方から考えるワークショップを、開催しました。まずは、横浜市温暖化対策統括本部・吉野部長から、横浜市が進める「スマートな住まい・住まい方プロジェクト」の取組みが説明されました。その後、コーディネイターの東さんの進行で第1回目のワークショップは進みました。

横浜市の詳しい説明資料はこちら(PDF:2.98MB)

第一回カフェレポート(コーディネーター:東みちよ)

「住宅は、住むための道具である」--------まるでコルビュジェのモダニズムに疑問を投げかけるかのように、これからの時代の“住まい方”の新しいキーワードを導き出した第一回目の「スマートな住まい・住まい方カフェ」。講師には内山博文さん(株式会社リビタ)を迎え、革新的なリノベーションを手がけてきたこれまでの住まい提案と、これからのまちづくりについてお話を伺いました。

「持つ」から「住まい方」、「モノ」から「コト」への変化

コミュニティ作りを後押しする団地リノベの取組み

わが家を持つことが、人生の目標の一つだったのは少し前のこと。今は、わが家をどう住みやすく変えていくか? という住まい方のほうが大事だと内山さんはいいます。これまで手掛けてきた数々のリノベーション物件では、“余白のある家づくり”を提案してきました。

コミュニティ作りを後押しする団地リノベの取組み

「価値観の多様化によって、家の住まい方は大きく変わってきています。家は、作り手である施工者から、オーナーに引き渡してそこで終わり、というものではなく、そこに住む人が家をどんなふうに住みたいか? 一緒に住まい方を考えることのほうが大切なんですね。そのために私たちはリノベーションで住まいを提案する際には、スケルトンに近い状態でシンプルに仕上げることが多いです。そうやって家に余白を残すことで、そこに暮らす人の考える楽しみが生まれるんです。一緒にDIY体験してもらうために工具をお渡しすることもあります。ユーザーリテラシーに訴えるモノ作りのほうが、合理的で満足度も高いのです」

家計にも、環境にも、ローコストなリノベーション

住宅は、モノを作れば良かったという時代から、コトを創造し、ユーザーのニーズを堀り出し啓蒙していく時代へと変化していると内山さんは言います。またこうした考え方によるリノベーションは、経済面や環境面でもメリットがあるそう。

「私たちが主に手掛けてきたのは、築35年くらいの古い物件です。この時代は耐震設計が十分でなく、市場では価値も低いのですが、実はリノベーション物件としては魅力的でもあります。庭付きの戸建で約1500万円くらいでリノベーション工事ができます。断熱工事なども行い、エネルギーパス(※注1)の面でも配慮して仕上げることで、住む人にとってトータルでコスト削減となるような家作りをしています。またCO2排出の点から見ても、人が家に住む年数を平均80年として、新築を買い替えした場合と、中古住宅をリノベーションした場合とで比べても、その間に2回リノベーションするとして、トータルのCO2は約1/3に抑えられると言われています」

コミュニティ作りを後押しする団地リノベの取組み

コミュニティ作りを後押しする団地リノベの取組み コミュニティ作りを後押しする団地リノベの取組み

集合住宅においては、新しいコト作りもはじまっています。リビタが企画設計から運営管理を行うUR団地をリノベーションしたシェア型賃貸住宅「りえんと多摩平」では、シンプルな共同住宅の設計により、地域コミュニティの形成を後押ししています。

「ここでの課題は、共同住宅の住人がいかに地域とつながるか、ということでした。そこで地元民と住民を結び付けるイベントを行ったり、住民同士のつながりを深めるための仕掛けも作りました。それが、部屋に水回りを置かないということです。キッチン、洗面などを共有することで、さまざまなつながりが生まれています」

地域と人を重視した、都市の多様性とは?---ポートランドの事例から

まちづくりの事例として、内山さんがいま注目しているのは米国ポートランドの取組み。都市の多様性は、これからのまちづくりの要となるのでは、と提案してくださいました。

「地域を大事にする、ローカルファーストとは何か? と思ったときに参考になるのがポートランドのまちづくりです。都市計画においては地域性を重視し、ショッピングセンターなどにもローカルブランドを優先させるなど徹底しています。大型建築はすべてLEED認証(※注2)が求められ、一方で古い建築などとも共存しています。住宅のDIYも盛んで、街にはDIY用の建材を揃えたショールームもあります。住まいは自分で作っていく、家は住むための道具であるという意識が高いんですね。ポートランドの街全体から、街と人とが心地よく調和している空気が感じられます。ここを訪れて今一度思い出すのは、ジェイン・ジェイコブスの言葉です。彼女は都市計画においては、混用地域、小規模ブロック、古い建物の必要性を説きましたが、私たちの街づくりにも同じことがいえるかもしれませんね」

レポート:東みちよ

かつてアメリカの都市計画に疑問を投げかけたジェイン・ジェイコブスの言葉は、いままさに私たちが暮らす横浜にも、共通の課題を含んでいるように思われます。高密な都市でありながら、古い建築物や、昔ながらの露地なども混在し、多様性を育んできた横浜。
内山さんとの対話では、そうした多様性を踏まえてもう一度、「スマートな住まい、住まい方とは何か?」を巡っての議論が盛り上がりました。環境未来都市のゆくえを考える上でも、第一回目のトークは、次へとつながる濃密な提言となりました。

カフェレポート①

・横浜市 温暖化対策統括本部
 環境未来都市推進担当部長 吉野議章

・株式会社リビタ 常務取締役
 内山博文

カフェレポート②

対談
・株式会社リビタ 常務取締役 内山博文
・コーディネーター:東みちよ

<注解説>

※1 エネルギーパス EU全土で義務化されている「家の燃費」を表示する証明書。ここでは家の燃費という意味で表現されている。
※2 LEED認証 Leadership in Energy and Environmental Designの略で、建築物全体の企画・設計から建築施工、運営・メンテナンスまでにわたって省エネ、環境負荷を評価するもの。米国グリーンビルディング協会が実施している。

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