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スマートな住まい・住まい方カフェ
第3回 セカンドライフ!

今の住まい、住まい方にもう一つ、別の選択があるとしたら…? スマートな住まい・住まい方カフェの第3回目は、第二の選択としてのセカンドライフがテーマ。ゲストには、都会と田舎を往復しながら二地域居住を実践する、馬場未織さん、そして横浜でユニークなシェアハウスを運営する酒井洋輔さん(住まいの松栄)を迎えお話頂きました。

第三回カフェレポート(コーディネーター:東みちよ)

おばあちゃんの味を、住まいのコンテンツに---酒井洋輔さんのセカンドライフ

あいさつ会からはじまる、マンションのコミュニティ作り

人と人の関係作りのさじ加減

「僕、おばあちゃん子なんです」
横浜・菊名でユニークなシェアハウス「おばあちゃんハウス」を運営する不動産会社、「住まいの松栄」の酒井洋輔さんは、そう笑います。6室の単身用住居を備えたシェアハウスは、週に3回、おばあちゃんの手料理を出すほか、掃除などの家事サービス付きで話題となっています。
「巷ではシェアハウスのオシャレな物件も増え人気ですが、もっと和める空間が欲しいと思ったんです。そのために必要なのは何かと考えたときに、そうだ、おばあちゃんの味だ、と。サービスの初日は、おばあちゃんが肉じゃがを作りました」

おばあちゃんハウスと聞くと、家族同様のアットホームな世界を想像しがちですが、業務契約はいたってクール。献立は住人たちが決める、作った食事は個人別に分けて用意する、住人の評価によっては契約終了となる、などなど。そうやってビジネスライクに一定の距離を保つことが、おばあちゃんと住人とのいい関係を続けるコツでもあると酒井さん。それでも週に1度、みんなが顔を合わせて食事したり、おばあちゃんと交換日記をしたり、関係作りの支援も行っています。また、おばあちゃんがいることで、ご近所からも親しまれ地域の信頼を広げているそう。

ローコストで実現、人+リノベーションの魅力

実家というもう一つの地縁とのつきあい方

おばあちゃんをコンテンツとすることは、経済面でも大きなメリットに。 菊名のこの物件は、駅にも近い65坪の敷地を持つ戸建住宅をリノベーションしたもの。

地価から見積もれば8千万以上はする物件です。

「もし不動産として売買しようとしたら、大きなコストがかかりますが、オーナーさんから賃借し、改修工事をして小さな投資で運用することができました。築42年の古い木造建築ですが、その持ち味を生かせるようになるべく元の建築を生かしたリノベーションを行いました」

実家というもう一つの地縁とのつきあい方

改修工事費用は、カローラ1台買えるくらいとか。あまり改修に手をかけずとも人気なのは、やはり「おばあちゃんの味」のなせる技。従来、住まいの価値は建物などのハードで判断されてきましたが、実は人というソフトに目を向ければ新たな価値が生まれるのです。

東京=南房総の半田舎暮らし---馬場未織さんのセカンドライフ

東京=南房総の半田舎暮らし---馬場未織さんのセカンドライフ 東京=南房総の半田舎暮らし---馬場未織さんのセカンドライフ

左は南房総、右は東京の家

一方、「こどもたちに田舎がつくりたくて、‘おばあちゃんがいない、田舎のおばあちゃんち’ををつくろうと思ったんです」と、都会に住みながらも週末は南房総で過ごすライターの馬場未織さん。子育てをきっかけに田舎暮らしを決意した馬場さんは、2011年に南房総に8700坪の土地を格安で購入し、里山での生活をスタートしました。

「田舎暮らしといっても、私の場合は、平日は東京で仕事をしながら、週末に南房総へ家族で移動して過ごすという二地域居住です。東京からクルマで1時間半、二つの家を持つことで私自身、変わったのを実感しました。南房総の自然の中で過ごしていると、風景が昨日と違って見えるんです」

そんなふうに感性を磨くことができるのも田舎暮らしの魅力。馬場さんは、それを都会暮らしにフィードバックしながら、子育て、仕事を充実させてきました。

日々の暮らしは発見そのもの。里山で生きるということ。

日々の暮らしは発見そのもの。里山で生きるということ。

しかし田舎暮らしは、都会のようにカンタン、便利に暮らせるわけではありません。
「広い敷地の草刈りや農地管理、イノシシ被害の対応など、自然の中でヒトが生きる場所を獲得するための作業がこれほどあるのかと驚きました。そんな中で、春は雑草の茂みが食べられる野草の宝庫となり、夏は隣りの川で泳ぎ、秋は収穫を喜び、冬は山の整理をしがてら焚き火をしたりと、里山の四季が暮らしと一体化するという日常に、心を奪わたのです。私たちにとって、日々の暮らしは発見そのものでした」
これまで野良仕事など経験のなかった馬場さんは、週末のたびに草刈りに畑仕事にと日中は外に出っぱなし。それでも、見晴らしのいい場所にデッキを作ってカフェのようにくつろいだり、小川で生き物と戯れたり、自然の景色や生物たちに囲まれながら暮らす家族の姿は、まるでホームドラマを観ているかのように悠々自適。ですが、それを育児と仕事をこなしながら続けるには、きっと新しいものを受け入れ消化していくための奮闘があったに違いありません。

都会と里山をつなぐコネクターに

都会と里山をつなぐコネクターに

そうした馬場さんを支えてきたのは、家族や仲間たち。南房総では、NPO南房総リパブリックを設立し、仲間たちと里山学校などの自然学習を行ってきました。また、地域の人たちとも交流するように。
「農作業を教わったり、畑で採れた野菜を頂いたり。地域の方々にはいろいろと助けられてばかりです。でも一方で、村では高齢化、過疎化という問題も抱えています。私は都会と里山をつなぐコネクターとして、田舎暮らしの魅力を伝えると同時に、この地域の活性化を続けていきたいと思っています」

住まい・住まい方を、ナナメ、ヨコ、ウラから見直そう

酒井さん、馬場さんに共通しているのは、住まい・住まい方の価値の変化です。酒井さんは、これまで賃借物件の価値基準とされてきた築年数や設備といったものをひっくり返し、おばあちゃんという人格を備えたコンテンツに注目することで、かけがえのない価値を生み出しています。また馬場さんは、自然とともに暮らす里山をもう一つの住まいとすることで、お金で便利さを買う都会生活とはまったく違う価値に遭遇しました。
セカンドライフの第一歩は、いまの住まい・住まい方を、ナナメ、ヨコ、ウラから見直し、自分なりの価値を探ってみること、かもしれませんね。(コーディネーター 東みちよ)

カフェレポート①

・「住まいの松栄」松栄建設株式会社
 酒井洋輔

・NPO法人南房総リパブリック理事長
 馬場未織

カフェレポート②

対談

・「住まいの松栄」松栄建設株式会社
 酒井洋輔

・NPO法人南房総リパブリック理事長
 馬場未織

・コーディネーター:東みちよ